不動産の売主は、売買代金を受取って所有権を移転するだけだから、売買契約書はあまりよく見ないとうことが多いのですが、売主側にも大きな責任が生まれる売買契約時の注意点など、売主側の観点から売買契約時の注意点について解説します。
権利証(書)を確認しておこう
権利証(書)とは、所有権登記を行った時の書類です。
不動産の引渡の時に必要な売主さんの書類は
- 権利証
- 印鑑証明書
- 委任状
- 登記原因証明情報
以上のような書類が必要です。この他に売主さんの住民票などが必要になる場合があります。
かなり以前から所有していた不動産の場合などでは、権利証が見当たらないということもあります。そのような場合には権利証が無くても所有権移転登記は可能です。ただし、引渡の当日に実は権利証が見当たらなくて・・・では、準備が出来ませんので、事前に権利証があるかどうか確認をして下さい。
登記上の住所を確認しておこう
不動産を所有してから現在までに住所の移転があった場合には、所有者の登記上の住所と現在住所が異なることが多いのですが、所有権移転にあたっては、印鑑証明書が必要ですので、登記上の住所を現住所に一度変更登記した上で、所有権移転登記を行います。
住所の変更登記を行うには、所有者の住所移転の履歴がすべて分からないと、本当の所有者かどうか判定できないので、登記上の住所から現在の住所への履歴が分かる書類が必要です。
住所移転が2回ぐらいまででしたら、現在の住民票を取得すると移転履歴が分かりますが、それよりも多い移転がある場合には、戸籍附票を本籍地の役所から交付してもらいます。
戸籍附票には、これまでの住所の移転の履歴がすべて記載されています。
一括弁済の連絡は早めに
売却する不動産に抵当権が設定されている場合があります。住宅の場合には住宅ローンの抵当権がほとんど設定されています。
引渡時には、売却代金から住宅ローンの残高を金融機関に返済し、抵当権の抹消を行います。
抵当権の抹消の際には、一括弁済の日によって清算する金利が異なりますので、早めに引渡日を金融機関に連絡し、スムースに抵当権抹消と引渡が出来るように準備をしておきます。
瑕疵担保責任の条項を確認しよう
不動産売買には瑕疵担保責任というものが、必ず契約上、取り決めがあります。
瑕疵担保責任とは、売買の時には気が付かなかった隠れた不具合を言います。
例えば、引渡後に床が腐っているのが見つかったとか、屋根裏に本来は入っているはずの断熱材が無かったとか、建物の性能などに影響を与える不具合です。
中古住宅の場合は、売主さんがこれまで住んでいた個人の場合がほとんどです。その場合、先に書いたようなことが仮にあったとしても、それは売主さんの責任ではありません。その為、売主が個人の場合には瑕疵担保責任は負わないという特約をしてもよいことになっています。
万が一、瑕疵担保責任を負うことになっている契約書であれば修正してもらって下さい。
瑕疵担保責任期間が3カ月という特約について
民法では売主の瑕疵担保責任の期間について第566条に次のように定めています。
瑕疵担保期間は1年間となっているのですが、売主が個人の場合には特約によって期間を短縮したり、瑕疵担保責任を負わないという特約もできます。ただし、その場合、売主が物件に瑕疵があることを知っていて、そのことを買主に伝えていない場合には特約は無効となります。つまり・・・
売主が個人の場合は、瑕疵があることを知らなかった場合には、瑕疵担保責任は問われない。という原則があります。
ところが、某大手不動産仲介会社では、個人が売主の場合、瑕疵担保責任は3カ月ですと説明しています。
3ヶ月間の瑕疵担保責任があるので、その瑕疵担保責任を保証する制度を実施している某社に売却を依頼する方が安心ですよ!・・・とピーアールしているわけです。
では、そもそもその3ヶ月間の瑕疵担保責任は、どんな法律にもとづいたことなのかというと・・・・・大手不動産会社が加入している某団体の単なるルールなんです。