10月25日からスタートする「改正 住宅セーフティネット法」によって、空き家事情はどう変わり、賃貸住宅の入居を断られる独り住まいの高齢者や、子供のいる低額所得者などの“住宅弱者”が、住みたい街の住みたい住宅に入居することが可能になるのか、新しい制度について見てみたいと思います。
改正「住宅セーフティネット法」ってどんな法律
長い名前ですが「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律」これが改正された「住宅セーフティネット法」の正式名称です。略称は「改正SN法」と言います。公布は平成29年4月26日、施行が平成29年10月25日です。
この「改正SN法」が生まれた背景には3つの要因があります。
- 賃貸住宅の入居申込みを断られやすい人たちが増加している
- 独居の高齢者は孤独死の可能性があり断られる
- 申込本人や保証人が低額所得者の場合、家賃滞納の可能性があるとして断られる
- 小さな子供のいる世帯は騒音などのトラブルを起こしやすい
- 公営住宅などの新設が見込めない
- 民間では空き家・空き室が増加している
このような社会的・経済的な背景により生まれる“住宅弱者”のサポートと、増大する空き家・空き室の有効活用により問題視されている空き家問題の解決を図ろうとするのが、この法律の目的です。
では次にこの法律の概要を見ていきます。
改正SN法の概要
- 改正SN法に適合する賃貸住宅の登録制度
- 登録した住宅に“住宅弱者”が円滑に入居できる措置
この2つが柱になっており、次のような制度や措置が行われます。
- 改正SN法に適合する賃貸住宅の登録制度
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- 耐震性能や居住面積など基準を満たす物件を都道府県に登録
- 都道府県は登録住宅の情報公開を行う
- 都道府県は“住宅弱者”の入居を拒まないよう賃貸人の指導監督を行う
- 登録住宅のリフォームに関して住宅金融支援機構の融資対象に加える
- 登録住宅に対して自治体からの家賃補助を行う
- “住宅弱者”が円滑に入居できる措置
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- 登録住宅への入居促進を図る“居住支援協議会”を組織する
- “居住支援協議会”は居住支援法人(NPO法人等)、不動産関係団体(宅建業者・賃貸管理会社・賃貸人)、都道府県によって構成する
- 居住支援法人(NPO法人等)が主体となって入居促進を行う
- 家賃保証会社に対し情報提供を行い、住宅金融支援機構の保険引受けを可能にする
- 居住支援法人(NPO法人等)が家賃保証を行う制度を実施する
- 生活保護受給者の住宅扶助費等を直接賃貸人に支払う“代理納付”を推進
“住宅弱者”を支援し空き家対策に寄与できるか
改正「住宅セーフティネット法」のねらいや、制度の概要がある程度分かったかと思いますが、この法律によって問題が解決されるかどうかを考えてみたい思います。
いろいろな制度などの構築が考えられていますが、主体的に活動するのがまだ組織されていない“居住支援法人”です。
この法人がきちんと組織され、ねらい通りの活動をするかどうかにかかっているように思います。
“居住支援法人”を誰が組織するのかということもポイントです。
都道府県が音頭を取っても、不動産会社や大家さんたちが積極的に動いてくれないと「画にかいた餅」になってしまいます。また、都道府県の関わりが「賃貸人の指導監督」のように、上から目線の立場でいるとうまく進まないような気がします。
大家さんと管理会社の結び付きは、長く大家さんをやっている人ほど強いものがあり、この制度が始まったとしても、多くの大家さんは管理会社からの情報提供が無ければ、この制度について知らないで済んでしまいます。
では、管理会社にとってこの制度がどう評価されるかということですが、入居率アップのひとつの方法でしかありません。積極的にこの制度に乗っかろうという考え方は生まれにくいのではないかと思います。
ねらい通りの効果が出るかは、管理会社や不動産仲介会社が積極的に関わるような仕組みづくりを作ることが出来るかどうかにかかっているように思います。